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ビールゲームとは?ルールや実施の流れ、活用例を紹介
目次
ゲーム的な要素のある研修は、難しいテーマを体験的に楽しく学べるので人気があります。とはいえ、実際に研修を企画・運営する側としては「具体的に何をすればいいのかわからない」と頭を悩ませているケースも多いのではないでしょうか。
そんな担当者の方におすすめなのが、ビールゲームです。ビールの発注や納品を通して、システム思考や全体最適の重要性を学ぶことができます。この記事では、ビールゲームのルールや実施の流れ、活用例を紹介します。
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ビールゲームとは?
「ビールゲーム」とは、在庫管理・サプライチェーンの原理が学べるビジネスゲームです。1960年代にマサチューセッツ工科大学スローン経営大学院の教授グループによって考案されました。シンプルでありながら、組織のコミュニケーションを改善し、チーム力の強化に役立つゲームとして、今なお世界中でプレイされています。
ビールゲームはチーム対抗で、どれだけ利益をあげられるかを競うゲームです。チームごとに適切な在庫管理を行い、品切れしないようにビールを流通させて、市場ニーズに応えることを目指します。
ゲームを通じて「システム構造が行動を生む」というシステム・ダイナミクス の大原則とともに、システム思考とはどういうものかを楽しみながら体験的に学習できます。
システム・ダイナミクスとは何か
システム・ダイナミクス(system dynamics)とは、1956年にマサチューセッツ工科大学のJ.W.フォレスターによって開発されたシミュレーション分析手法です。当初は、企業行動を研究するために考案されたので、インダストリアル・ダイナミクスと呼ばれていました。その後、1960年代に社会や経済、自然環境などへの応用論が提唱されるようになり、システム・ダイナミクスと呼称されました。
システム・ダイナミクスは、複雑なフィードバック構造を持つ物事を「システム」として捉え、構成する要素をモデル化し、その挙動をシミュレートすることで、実社会に存在するさまざまな問題の解決を図るアプローチです。「システム」というと機械的なイメージを持つ人もいるかもしれませんが、私たちの暮らしを取り巻く全てに関わります 。
例えば私たちの経済活動もシステムの1つです。需要、供給、価格などの要素がシステムを構成し、ある商品を買いたい人が増えて供給量が減ると価格は上がり、逆に供給量が需要よりも増えると価格は下がるといった相互作用を起こします。
参照:システム・ダイナミクス »日本システム・ダイナミクス学会 JSD
ビールゲームのルール
ビールゲームは最低4人1組でプレイするチーム対抗戦です。参加者は、ビールの製造から供給までの工程を担う「工場」「一次卸」「二次卸」「小売店」の4つのうち、いずれかの役割になります。4人以上でプレイする場合は、同じ役割に2人以上の担当者を配置すれば実施することが可能です。
ビールゲームのテーマは、消費者のニーズを汲み取りながら、適切な在庫量を管理し、品切れを起こさないようビールを流通させることです。
ビールは、工場から一次卸、二次卸、小売店へと発送されます。しかし、欠品を起こしてしまうと、顧客に商品を発送できず、ペナルティを課せられるので注意が必要です。ビール発注数や消費数(需要)を予測しつつ、どのくらい仕入れるかを検討しなければなりません。
ゲームは1週(1ターン)ごとに区切られ、30~50ターン実施して勝敗を決めます。ゲーム終了時に、サプライチェーン全体での受注残(機会損失コスト)と在庫量(在庫コスト)を最小化したチームの勝利です。
参照:ビールゲーム実施の流れ|システム思考研修 | ビジネスゲーム研修なら株式会社HEART QUAKE
ビールゲーム実施の流れ
ビールゲームのやり方をステップに沿って解説します。
参照:ビールゲーム実施の流れ|システム思考研修 | ビジネスゲーム研修なら株式会社HEART QUAKE
1.事前準備
事前に、机の上にビールゲームのシートをセットします。4人以上を1チームとして、工場、一次卸、二次卸、小売店の役割をそれぞれに割り当て、横並びに座ってもらいます。
2.ルールの説明
イベント担当者からルールの説明を行います。工場は原料からビールを生産し、ビールは一次卸、二次卸、小売店を経由して、最終的に消費者のもとに届けられます。ただし、発注してから実際にビールが届くまでにはタイムラグがあるので、適正な在庫の保持が必要です。在庫数が少なすぎると欠品して販売機会を失うリスクがありますが、逆に多すぎても在庫コストが発生します。
ゲーム進行中に各プレイヤーができる唯一の意思決定は「ビールの発注数を決める」ことです。「それだけ?」と思うかもしれませんが、この発注数の違いによって、ゲーム終了後の各チームのコスト総額は大きく変わります。なお、他の役割と相談することはできません。各役割が責任を持って意思決定することが求められます。
それ以外はルールに従って、コマを移動(配送)させたり、注文数や在庫数、発生したコストを記録シートに記入したりします。
3.ゲームの開始
ビールゲームにおいて、それぞれのポジションが担う役割は以下のとおりです。
小売店
- 消費者から注文を受けます (注文数が書かれたカードをオープンする)
- 発注数を決定し、二次卸へ発注します
- 二次卸から送られた商品を受け取ります
- 消費者へ商品を販売します
二次卸
- 小売店から注文書を受領します
- 発注数を決定し、一次卸へ発注します
- 一次卸から送られた商品を受け取ります
- 小売店へ商品を出荷します
一次卸
- 二次卸から注文書を受領します
- 発注数を決定し、工場へ発注します
- 工場から送られた商品を受け取ります
- 二次卸へ商品を出荷します
工場
- 一次卸から注文書を受領します
- 生産数を決定し、現場へ製造指示を行います
- 現場から送られた商品を受け取ります
- 一次卸へ商品を出荷します
4.ターンの繰り返し
注文から商品発送までのプロセスを30~50週(ターン)繰り返します。在庫は1つに付き10円、欠品は1回発生に付き20円として計算されます。在庫がなければ、せっかく注文を受けても在庫切れで出荷できず「受注残=機会損失」となって、必要な在庫を確保できるまで出荷できない状況です。その一方で、在庫が増えすぎると管理費がかかるので頭を悩ますところでしょう。
各プレイヤーは、発注から納品までのタイムラグを考慮したうえで発注数を決めなければなりません。「もっと多く発注しておけば、たくさん売って利益を増やせたのに……」「在庫が増えすぎて、管理費が利益を圧迫している」といった状況が発生します。
5.結果発表
ゲームが終了したら、各プレイヤーは自分のコスト額を計算します。その後、チーム全体でかかったコスト額を計算します 。総コストを最も低く抑えたチームの勝利です。成績発表を行い、優勝チームを決定します。
6.振り返り
ゲームの最後に振り返りを行います。振り返りは、ゲームを通して学んだことを確認し、次の改善に繋げるための時間です。「自分のことだけでなく、全体最適について考えてプレイすることができたか」「どうすればチーム全体のコストをより低く抑えることができたか」など個人で意見をまとめ、チームで話し合います。
7.講義
ゲーム終了後に、イベント担当者によるシステム思考についての講義を実施します。一度ゲームを通じて体験しているため、講義の内容への理解が一層深まるでしょう。調整できれば、在庫管理の担当者を招いて講義してもらうことをおすすめします。
ビールゲームのタイムスケジュール例
ビールゲームの所要時間は、3時間くらいを目安にするといいでしょう。ここでは、ビールゲームのタイムスケジュール例を紹介します。ぜひ参考にしてください。
ビールゲーム実施の流れ(一例)
- 担当者からの挨拶 5分
- チーム分け・ルールの説明 20分
- ゲームプレイ 90分
- まとめ・振り返り 20分
- 講義 30〜40分
特に重要なのは、ゲーム終了後の振り返りの時間です。実施して終わりにするのではなく、体験的に学んだことを次にどう生かすかが重要になります。「うまくいった」「思ったように進まなかった」ということの原因を検証し、よかったことは再現し、よくなかったことを繰り返さない、あるいは未然に防ぐためには何をすべきかを討議しましょう。
ビールゲームの活用例
ビールゲームの活用例を紹介します。
マネジメント研修
マネジメント研修の対象者となる管理職は、経営・組織を管理する立場です。本質的な問題解決や全体最適化を図るためには、物事をシステムとして全体的に捉えるシステム思考が欠かせません。システム思考は複雑な物事を構造的に理解するうえで役立ちます。
ビールゲームでは流通のプロセスにおいて、他の役割からの圧力をお互いに感じながら、自らの意思決定を遂行しなければなりません。一連の流れを体験することで、システム思考を学ぶことができます。
コミュニケーション研修
ビールゲームでは、コミュニケーションの制約があり、役割の異なる人と直接話すことができません。報連相の不足によって生じる誤解やトラブル、チーム力の低下などを体験できます。部門間のコミュニケーションの重要性や効果的な対話について考えるきっかけになるでしょう。
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■研修テーマ・アクティビティの例
- コミュニケーション研修(謎解き脱出ゲーム)
- ロジカルシンキング研修(リアル探偵チームビルディング)
- クリティカルシンキング研修(混乱する捜査会議からの脱出)
- PDCA研修(ロケットPDCAチャレンジ)
- 合意形成・アサーティブコミュニケーション研修(コンセンサスゲーム)
まとめ
ビールゲームは、ビール工場を疑似体験することで、システム思考や対話の必要性を学べるビジネスゲームです。ゲーム感覚で楽しみながら、サプライチェーンマネジメントの知識を深められます。社員同士のコミュニケーションの活性化や、チーム力の強化にも役立つでしょう。
システム思考研修やコミュニケーション研修を検討している場合は、ビールゲームを取り入れてみてはいかがでしょうか。
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福岡在住。大学を卒業後、大手食品メーカー勤務を経て、異業種のライターへ転身。求められている情報をわかりやすく伝えることがモットー。